グラースのジャスミンは、世界の香水産業が最も重視する植物性原料のひとつだ。収穫は毎年八月から九月の早朝に行われ、開花後数時間以内に処理しなければ香気成分が変質する。Knightly Willow Coveが使用するジャスミン・アブソリュートは、グラースの農家Domaine Laugierから毎年直接仕入れている。

グラースのジャスミンが特別な理由

グラース産のジャスミン・グランディフローラムは、インド産やエジプト産のものと比べて、インドール(花の重みを出す成分)の含有量が低く、フレッシュな青みが強い。これは土壌と気候の組み合わせによるもので、同じ品種でも産地が変わると香りの印象が変わる。Knightly Willow Coveでは1989年からグラース産のみを使用している。

収穫年による変化

ジャスミンの香気成分は、その年の気温と降水量に影響される。2022年の夏は南仏が記録的な熱波に見舞われ、ジャスミンの開花が例年より二週間早まった。その年のアブソリュートは甘みが強く、青みが少なかった。Isabelleはその年の原料を「Saule 1974」復刻版には使わず、別の配合に回した。こうした判断の記録が調香ノートに残る。

Domaine Laugierとの関係

Knightly Willow CoveがDomaine Laugierと取引を始めたのは2003年だ。当時の農場主Alain Laugierとの出会いは、グラースの蒸留所で開かれた小さな原料見本市だった。現在は息子のThomas Laugierが農場を引き継いでいる。毎年九月、Isabelleはグラースを訪問し、その年の収穫の状態を確認する。

調香ノートに産地を記す意味

Knightly Willow Coveの調香ノートには、使用した原料の産地と収穫年が記されている。これは透明性のためでもあるが、それ以上に、香りが特定の場所と時間に結びついていることを示すためだ。2025年産グラース産ジャスミンで作った香りは、2025年の夏のグラースの記憶を含んでいる。その事実を記録しておきたい。

原料の産地と収穫年は、香りの履歴書の最初の行だ。「Figuier de Juillet」の調香ノートには、使用したジャスミン・アブソリュートの詳細が記されている。現在のエディションのページから確認できる。